声が-------------聞こえた。













 そこで話している声は二つ。
 声が聞こえるのに、何の話が分からない。



 少し尖ったような単語。なのに柔らかい発音。





 優しい、声だった。





















結局そのまま眠ることはできず起き上がったところ すでに誰かが起きていたらしく
 覗き込むと朝食の準備をしているらしい006の姿があった。
 そういえば X島を抜け出している途中も、コウモリやヘビで調味料もない状態を
手早く自ら火を起こし調理をこなしていたことを思い出す。
 左足に力が入り床がミシリと鳴りる。

「007あるかー?」
 その音を003の様に調理の合間に聞き分け006は009に背を向けたまま007を呼ぶ。
が、すぐに振り返って009と目が合う。
「あんれー、009だったあるカ。007と間違えたあるよー」
 と細い糸のような目で謝罪交じりにふにゃりと笑う。
 もともと出会った頃から006は愛想がよい。
そのやわらかい雰囲気に009はどころなく安心する。
「今日は009、当番じゃないから ゆっくり寝ていて良いアルよー?」
「…なんだか、早く目が覚めて…手伝うことあるかい?」
 ほっほーと006は笑う。
「コズミ博士の所にいた時も朝一番に起きてよく手伝ってくれたネ」

 それは009が知らない記憶だ。

 なんせその朝を迎える前に009は「今」を迎えた。
 そして今と似たような話を006としたのだろう。しかし。
「僕、最近は あまり手伝ってなかった、のかい…?ごめん…」
「違うアルヨ、よく手伝ってくれてるネ?だからこそ、当番制にしたねー男子厨房に入るベキよー!」
 今日はワタシと007ヨ、相変わらず寝坊するアルガ。と柄杓を持ち上げる。
 何気ない言葉だった。しかし006は間違いなく009を思って起こしてくれた議題だったのだとおもう。
 ましてや00メンバーの中の新参者だ。
 009自身もわかっての通り何かしていないと落ち着かなかったと思う。
 どれ程の時間ともにいるかわからないし、この程度で調和が保てて自分の居場所が一瞬でも確保できるなら
それを暗黙の了解として受け入れていただろう。
不満でもなかっただろうし以前の生活とは違う。
 やらなくてはいけないこともない。
理解できない理不尽な決定事項に流されることはないが
 この程度なら苦ではない。しかし006は見逃せなかったと見える。
009からはその提案を持ち出す ことはできなかったはずだ。
「ありがとう、006」
 果たしてその提案が議会で可決されたとき、009は006に礼を言えたかの自信がない。
そもそも記憶そのものが欠落している。
 ボキャブラリーも相手に伝える言葉もいつもうまく選ぶことはできないが今、このタイミングは
 沈黙せずに礼を言ってよいのだと自信があった。
 すると006はきょとんとして009を見ていたが再び ふにゃりと笑い。
「よくわからないあるが、009はやはりワタシの好きな009ネ」
 そして006は009の後ろにある玉ねぎを指さして、それ剥いてほしいねーと009を見ると



 009からは湯気や煙が出ていた。








 その後 キッチンからは

「火事ネー!!008呼ぶねー!!水吹きかけるねー!!!火事ネー!!」と006の叫ぶ声と

「それ新人いじめダ!ついでに008はお前みたいに貯水してない!」
 と007の制止する声がギルモア邸に響いていた。





 006の手伝いも途中でありながら水をぶっ掛けられるという惨事にあった009は、
タオルで髪を拭きながら部屋のベットに座った。
 その部屋に置かれている机の引き出しに目が留まる。
 真夜中に見たそれはやはり夢ではないらしい。
 一本の線のようになその焦げ跡。
 ベットから立ち上がり009は意を決し今度こそその引き出しを開く。
 ずっと、自分の部屋だと言われても、着替え一つとるのにもその人の部屋を勝手に荒らすようでひどく心苦しかった。
 だが、じっくり部屋を眺め、そこに居ればいるほどすべてが009の納得いくような統一のされ方だ。
 開いた引き出しは文房具の類が入っている。
 ペン、便箋、シャーペン、消しゴム、修正液、分度器、定規、メモ帳、付箋 小さな箱。
 引き出しの中を見るのは2度目だ。やはりしっくり来る。
 だが、その中の小さな箱の中身はどうも何が入ってるのか想像ができず、初めて009は箱のふたを開いた。















 濡れたタオルと服を洗濯用のかごに入れた後、窓の外に赤い車が止まったのが見える。
じっと見下ろすと車から004と003が出てきた。
 買出しから戻ってきたのだろう。
 親しげに身を寄せて二人が話している様子を見た009はふと、彼らの番号や、一番最初に出会ったときのことを思い出す。






 003が009の見えないその領域まで、”見た”あの瞬間だ。



 そしてマナー違反だろうか、と思いながら比較的、好意的に接してくれる007をリビングで見つけた。  リビングのソファに座って紅茶を飲んでいた007に声を掛けた。



「・・・004と003は恋人?」


 007は紅茶を炎の様に噴出す。

 正面のテーブルに吹かなかったことだけが唯一の矜持だったろう。
 009はその様子に驚き布巾とタオルを慌てて取ってくる。
「だいじょうぶかい?」
「おお、おま、それ…あの二人に絶対に言うなよ」
「え?」
「二人は仲間だ」
 断固として007は言い切る。その様子は至極真面目だが、
まるで、地獄の底でものぞいているような脅えた顔だ。
「並んでる姿が絵になってたからてっきり…」
「二人は仲間だ。やめろ、死に急ぎ」
 009が告げる言葉を007は遮る。
「この内容はせめて脳波通信、カッコ個別カッコ閉じるを使え」
 小声で007は009に耳打ちする。きょとんと009は何度が瞬きをする。
(004はともかく、003に知れたら…)
 この場にいない紅一点に安心するが、彼女の能力は超視超聴力。うっかり聞いたかもしれない。
「個別,通信?なんだい、それ」
 一瞬驚きはしたものの、時間軸を考えると009の反応も当たり前である。
 そもそも個別通信を使う機会が実に少ない。まったく持って使わないわけではないが。
 あれば便利なときもある、位の感覚だ。

 改めて納得するが、そうなると009は  一体誰にどのタイミングで教わったのか




 ふと、4番目の仲間の顔がちらついた。


「009、お前004とはどうだ?」

 ほぼ反射的に009は007を見た。
 自らの反応に戸惑う009に言ってしまってから007は空気を読めてなかったなと思いつつも、そのままにしておくのも、どうも虫の居所が悪い。
「…気に障ることを、したんだと思う」
 ぽつりとつぶやき切り出した009。

 誰が誰に。など野暮なことは聞かない。わかりきったことだ。
「たぶんあいつあれが常時運転だぞ」
 と少しピリピリした004の姿を思い出しながらとにかくフォローをしてみる。
勿論007自身もうまくフォローできたとは思っていない。
「距離を感じてるっつーなら、抱き着くとかどうだ?」 


「君たちのと距離は忘れても、自分は忘れてないつもりだよ」
 なんだ、抱き着くって
 009はどういう発想だとでも言いたげな顔で拒否した。
思わず噴出す007に009は眉を潜めている。
「すまんすまん。そうだよな、そのとおりだ」
 切り返しのが間違いなく007の知る009だ。
 呆れていた009はすぐさま、戸惑ったよう顔をするも結局は007の雰囲気に負けて笑った。


 その様子は 007の知る、気持ちのいい程 真っ直ぐな、優しい青年だった。














 どたどたどた。と


 バルコニーに出て海をぼんやりと眺めてい009がその乱暴な足音を怪訝に思って振り返ったときには、彼は青い空しか見えなかった。
 状況を判断する間もなく上は青い空、下は青い海だ。当たり前の話だが踏ん張る足元など皆無だ。
 呆けた声すらでない。
 だが、この光景に見覚えがある。
「俺のことわかるか」
「…002」
 声の元をたどると視線の先にいるのは002だった。
 誰だという認識があるのに多少なりとも落ち着いたようではあったが棘のある雰囲気が幾分か柔らかくなる。
「君、いつ日本に…」
「今?」
 昨日の時点で003の話では002はNYにいると聞いていた。すぐにチケットが取れたのだろうか。
「直」
「直?!」



「お前、ムアンバでのこと覚えてるか?」
「化石のことは?」

「オーロラは?」
「すかーるを倒したことは?」
 次々に質問されるが009はどれ一つ心当たりがない。精々BGの総帥であるスカールを倒した話を又聞きした程度だ。
 それ以前に。
「足もとあるところで、話しないかい・・・?」
 果たして足元があったとしても、009は002と話すべき内容を思い出せるかは不明だ。
「…のことは?」
 さいごに002が009に尋ねたことを、009が聞き返すために
見上げたその顔は詰まらなさそうで、どこかぽっかりと何もない穴を見下ろしているような顔だった。
009の足元には地面はなくひどく不安定だ。
 研究所は文庫本くらいだ。この時点でいったい何メートルなんだろうか。
 おまけに支えが002が009の胴体にまわしこんだ腕一本。不安にだってなる。
 
 002は少し考えた後、009を見下ろすと009を捕まえていたうでを手放した。




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 元々勉強は真面目にこなしていたつもりだが、必要以上にしていたかどうかは定かではない。
 だが、物理で大体60キロ程度の物体が落ちたときの速度とその衝撃を計算したような記憶はある。
 問題は公式を覚えていないことだ。
 単純に言って50mの高さからなら 大体時速100km。60mなら 時速120から130km
 しかも重さを考慮していないから、きっと公式も答えも変わる。
 今の自分ならどれくらいでばらばらになるのか想像もつかないが、

 ただ、凄まじい衝撃だけでは視界がぐちゃぐちゃにぶれた。 009の意識はそこからわずかに飛んだ。









 気がつけば木漏れ日が見えている。
「大丈夫かい」
 聞き覚えのある声、見覚えのある顔。
 8番目の仲間が覗き込んでいた。
「・・・やぁ」
「気分は?」
「・・・・・・・・・・頭が、がんがんする」
 ぬれねずみで口の中が塩辛らい。
「…また、助けてもらったね」
 悪いね…。と一番最初に海の中で彼の泳ぐ姿を思い出す。
「…おぼえてるのかい」
 008が驚いたように見下ろしてくる。
「覚えてないのはコズミ博士の研究所に来てからだから」

 体を起こし009は座った。

 空を見上げるとぽっかりと白い雲が浮かんでいる。




 002の姿はない。



「…許してやってよ」


 008はひどく申し訳なさそうに告げた。


 その様子は、以前 どこかの親が子供の代わりに誰かに謝罪している姿に似ていた。





 許すも何も、勘弁してほしいのはこちらだ。






 知らないことを責め立てれらている、そう 009は言いたかった。
 けれど。

「拗ねてるんだ、君に忘れられたから」



 009は口を開きかけて結局のところ、それを言葉にすることが出来なかった。



 中間の位置に立っていても、008は間違いなく002の味方だろう。
 どんな返答をしたとしても無意味だと思う。





 みんな優しい。



 ただ、なんと言うか、それでも根本的な所で009を責めているように感じた。
 そのことについて、誰かが何かすれば誰もが、009に各自のフォローを入れたとしても、
 これまでのことを忘れている009のフォローを誰にもしてもらえない。










 まるでタイムスリップして未来に来たようだと思いながら、



 教会にいた時を思い出した。
















 リビングの扉をくぐるとソファに腰かけ本を読む004と目が合う。








 009の姿に気がつくとわずかに何か言いたそうに口が開く。

 しかし、結局のところそのまま彼は口を噤み再び本へ視線を落とした。 

 ページをめくる音だけがリビングに響き、そのページをめくる右手に眼が行く。
 距離はそこまで離れていないが近くも無い。

 彼は今白い手袋をしていてページはめくるのに相性がどうなんだろう。




 ・・・手。



   思った矢先、009の脳裏にスライドしてきたのは不躾に彼を見てしまった出来事だ。
 今のところその話を蒸し返されることは無い。
 多少誤解があったとはいえ、機嫌を損ねたいわけでもない。

 そもそも009自身も自分の目や髪を同じようにじっくり見られるのが好きではない事情がある。
 それと同じことなら注意されても仕方がなかった。
 思っていてふと思い出したことがある。


「004、君のマシンガンの銃弾のサイズ・・・口径ってどのくらいなんだい」  


 脈絡の無い質問にほうけた顔をする004に しまった。と思う。が



「6ミリ=.24口径、だな」


 そのまま渋い顔になるのかと少しばかり血の気が下がったが思いのほか呆気なく004は答え、
 更には左手の平を上に向け指でちょいちょいと004は009を呼び寄せた。

 外人の仕草だなぁとどこか他人事のように思うと同時に、フラットな対応だということに気が付く。
 戸惑いながらも009はおずおずと004に近寄ると右手をひらひら察せ手の甲の側面に左手の指を押し当てた。
 右手の甲の一部がふたのように開き、そこから銃弾がしき詰まっているのが見える。
  004は敷き詰められている銃弾を一つ取り出してサイズを確認する。
「この間のメンテで少しばかり身軽になって、殺傷能力も上がったな」
 想像通りのマシンガンの弾が004の指で角度が変わる。
「装弾数と補充装填速度、数値や射撃振動率が抑えられて肘と肩の負荷が軽減した」
 マシンガンを撃てる弾数が多くなって、弾の詰め替えに時間が掛からなくなったこと、
撃った時の衝撃が減ったと言いたいのだと分かった。  本来なら何を言われているのか理解しにくい単語でも、どういうことを言っているのか本能的にわかる自分に009は内心驚く。
 淡々と説明する004の口調がどこか早口だ。

「衝撃に起きるブレを自動補正数値も上がったらしい」

 撃ったときの衝撃で次の射撃が影響しないように004自身が意識する前にズレを直すのだろう。
そんな説明の中で004の体に内蔵されている武器は何を使うにしろ、体には相当な負担が掛かることが分かった。
 相当な衝撃に耐えられる体のつくりになっているのだ。
 従来のマシンガンなどは通常射撃の衝撃に耐えられず、訓練をしていない者が取り扱えば銃口は普通、上と持ち上がり目標物を狙えなくなってしまう。
 004のマシンガンが映画などで見るマシンガンより小型であるとはいえ、衝撃も相当のものだろう。
 しかも、彼の体に内蔵されているのはマシンガンだけに留まらないはずだ。
 撃つたびに武器の反動で自分が吹き飛ばさているようでは話にならない。 

 なるほど、
と考えて009は004の早口のうえどこか理解しにくいような説明に違和感を覚えた。
 決してわからない話ではないのだが、同時に009との会話をいち早く切り上げたいのだとわかる。




 拒絶 だと。 


「そのうちガキでも銃が持てる時代が来るな」
 と彼は装弾部へ銃弾を戻す。
 何気なく聞いたことは009が考えにも及ばないほど004を不快にさせる理由になったかもしれない。
 けれど、どうしていいかわからず ただ 謝罪を口にした。
 その謝罪もどこか見当違いのような気がして更に追い詰まったように009の居所をわるくした。
 別にと、答えた004を見ても、表情の削げ落ちた顔に戻っていて、そのまま本から視線を上げることはなかった。

 単純な好奇心で尋ねたことではなかった。

  009は004に冷たくあしらわれ傷ついた自分の申し開きを自分にするほかない。

 ましてや会話を見つけようとして切り出したわけでもない。
 知りたいことではあったけれど、理由があった。
 でなければ基本この類の内容は慎む。

 そうでなくても、009は004に顰蹙を買っている。
 その後の対応がいくらフラットだったとしても 最初の出会いを004が初めてだからとおおめに見てくれただけで、
 それは一回目だけの話なのだから。
 けれど、どうしても その理由を009は004に伝えることは出来なかった。
 



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::




 ギルモアに呼ばれ処置室に入った009は真っ先に目に入った試験管の物体に眉をよせた。

「おお、すまん。これは君の目なんだが・・・・、どうも調節が上手くいかん」

 試験管の中にある物体は液体のようなものの中でぼんやりと浮かび上がり長い筋のような伸びている。
「なかなか見ることがないじゃろうが、君も学校の授業で習ったんじゃないかね」
 目が離せない009の様子に気が付き、ギルモアはさらにずいっと、009へその試験管を近づけた。




 009は片目を押える。





「わしは専門じゃないが、コズミ君が手伝ってくれてな、これでも早く出来上がってる方で」
 包帯の下には間違いなく自分の目玉がそこにあると009は疑っていなかった。

 視界がぐるぐる回り始める。




 009の様子に気が付かずギルモアは楽しそうに説明を続けている。
 自分の一部として目にはまり込んでいた臓器が取り出されて、1mも離れていない試験管の中にある。  
 右目に覆われている包帯を引き剥がそうとして形振り構わず力を込めたせいで009の爪が自らの顔を抉るように食い込むものの、包帯は解けない。
「…っつ!」
「・・!009!」 

 その様子に気がついた科学者は途中であったが言葉 の羅列をやめ、慌ててそれをとめようとするが009はかまわず、

 そのまま力任せに包帯を引きちぎろうとする。
 だが体勢が崩れ思わず後ろに下がった拍子に何にぶつかり倒れ込みそうになった。
 そんな009を後ろから掴み支える人物がいる。だがその相手を009は誰なのか認識できない。



「―――」



 後ろからきこえる3つの数字。
 0、0、9・・・・・・・・・・・・・・。



 試験管の、目玉がじろりとこちらを見ている。
 その目の奥の瞳孔が小さくなったように見え、思わず 息が止まり、
体全身に心臓から送り出される 血液が一気に流れ一気に止まる。
「・・・・・・あ、ああ」

 いや、本当に。血液だろうか。
 いや、血液ではないはずだ。
 手が右側の顔から離れないまま左手で口元を押さえる。
「―――」
 静かに後ろから聞こえてくる落ち着いた声は頭に直接語りかけてくるように響く。
「―――」


 言われても009は息をしているはずだった。
 目がこちらをじっと見ている。
 そもそも息は意識しないと出来ないことだっただろうか。
 目がこちらをじっとみている。
 息をしている。
息。
息。

息。
息。
 009009009009009009009009009009009009009009009009
 009009009009009009009009009009009009  009009009009009009-------------009009009009009009  009009009009009009009009009009009009  00900900-------------9009009009009009009009009009  009009009009009009009009009009009009  009-------------009009009009009009009009009009009  009009009009009009009009009009009009  009009009009009009009009009009009009
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ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる ------------- ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる ぐるぐるぐるぐる------------- ぐるぐる ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる





 

回る。
 009009009009009009009009009009009009
 009009009009009009009009009009009009  009009009009009009009009009009009009  009009009009009009009009009009009009  009009009009009009009009009009009009  009009009-------------009009009009009009009009009
 支えられている-------------  009009009009009009
なのに、感覚がない。
 009009009009009009009009009009009009  009009009009009009009009009009009009  009009009009009009009009009009009009
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 009009009009009009009009009009009009  009009009009009009009009009009009009  009009009009009009009009009009009009  009009009009009009009009009009009009 -------------  009はサイボーグだ。-------------  009009009009009009009009009009009009
 009009009009009009009009009009009009  009009009009009009009009009009009009  009009009009009009009009009009009009  009009009009009009009009009009009009  009009009009009009009009009009009009  009009009009009009009009009009009009  009009009009009009009009009009009009
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 009009009009009009009009009009009009  つくりものじゃないのか?
 009009009009009009009009009009009009
 ああ、ああ。そうか。そうだ。  009009009009009009009009009009009009
 そうだ、そうなのか。  009009009009009009009009009009009009
 つくりものだ。  009009009009009009009009009009009009
 つくり変えられるんだ。  009009009009009009009009009009009009
 入るんだ。  この、右側に。  009009009009009009009009009009009009  009009009009009009009009009009009009  009009009009009009009009009009009009  009009009009009009009009009009009009  009009009009009009009009009009009009
  だから、こんなに簡単に目玉が試験管の中にはまり込んでいる。  009009009009009009009009009009009009
 おとなしくじっとしてこちらをじっとみてる。  009009009009009009009009009009009009
 だから、マシンガンで撃たれても 平気だった。009009009009009009  009009009009009009009009009009009009  目がこちらをじっと見ている。
 平気だ。  つくりかえらえる。  つくりもの。  009009009009009009009009009009009009
 009009009009009009009009009009009009  009009009009009009009009009009009009  009009009009009009009009009009009009
 009009009009009009009009009009009009  009009009009009009009009009009009009
 だから、009は 簡単に 取り換えが利く。009009009009009009   いつから、いつから自分は009なんだ?こんなのだからこんなのだから・・・・・・・・・・・・・。  009009009009009009009009009009009009
 だからだからだからだから。
 009009009009009009009009009009009009
 自分は 009009009009009009009009009009009009   取り換えが 009009009009009009009009009009009009
 怖い。怖い。こわい こわい こわいこわい。  いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい。  いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいたいたい  怖い。こわい。痛い。いたい。  009009009009009009009009009009009009                  利く。  009009009009009009009009009009009009
 009009009009009009009009009009009009  自分でなくていい。 009009009009009009009009009009009009  簡単だ。 009009009009009009009009009009009009 とても簡単だ。
 009009009009009009009009009009009009  009009009009009009009009009009009009  009は人間でない。009009009009009009009009009009009009    009009009009009009009009009009009009  怖い。怖い。こわい こわい こわいこわい。
 いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい。  いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいたいたい  怖い。こわい。痛い。いたい。  009009009009009009009009009009009009  009009009009009009009009009009009009  009009009009009009009009009009009009  009009009009009009009009009009009009  怖い。怖い。こわい こわい こわいこわい。  いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい。  いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいたいたい  怖い。こわい。痛い。いたい。  怖い。怖い。こわい こわい こわいこわい。  いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい。  いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいたいたい  怖い。こわい。痛い。いたい。  怖い。怖い。こわい こわい こわいこわい。  いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい。  いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいたいたい  怖い。こわい。痛い。いたい。  怖い。怖い。こわい こわい こわいこわい。  いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい。  いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいたいたい  怖い。こわい。痛い。いたい。







「ジョー」









-------------名前だ。




 自分の名前だと、分かる。



 







 とん。っと背中を叩かれるような振動に009は小さく息を吐く。反動で息を吸った。



「―――、―――」


 耳が拾ったのは自分だった名前を呼ぶ声だけで、あとはその言葉の意味が分からなかった。









 この声を知っている。



 しってるはずなのに だれなのかわからない。 









このひとの

「―――、――――――――――」







 なまえを――――――――――




























―――――――――― よびたかった。
















 包帯を無理やり剥ぎ取ろうしていた右手は時間をかけゆっくりと解かれた。









 何かを、言っていることだけが分かる。









「…―――」



 何を言っているのかはわからない。


「…―――」


 009の右手を握りこんでいた手は指先が009の顔を抉った血で汚れている。


ごめんなさい。


こえに、できたかはわからない。


けれど、 てを


よごしてしまった。






ごめんなさい。































ちいさく。










そして
















しずかに、



















わらったような声がきこえた。







































そのこえに











ひどく、泣きたくなった。

















































 こわばっていた009の体は力が抜けて呼吸ができていた。
 009の覆われていた右側の視界は僅かに開けていた。
 間違いなく、見えているものがあった。





-------------声が、聞こえた。




 言葉が―――-------------分かった。



-------------その声を知っている。







 なまえを  ――――――――――――  よぼうとして  





 ふりかえろうとして





 しかし、




 009の意識は闇に飲み込まれた。

























 















 声が-------------聞こえた。




















 そこで話している声は二つ。起きているのに起き上がれなかった。
 声が聞こえるのに、何の話が分からない。



 誰の声かわからない。いくつかの言葉を話している。
 日本語ではない。


 英語でもない。


 この言葉はどこの言葉だろう。


 少し尖ったような単語。なのに柔らかい発音。


 学校で習ったような破裂音のような響き。


 聞きなれない言葉。低い声。
 考えがまとまらないうちに声は途切れ、 ふっと周りが暗くなった。
 瞼が開かれる。自分で開いてはいない。
 外から何かが広げている。
 暗いのに見える。何も見えないのに見える。
 周りのものが緑色の配色が強い解像度の低い映像を見ているようだった。
 ずっとその映像にはノイズがばら撒かれている。
 円を描きながら点線が浮かんでゆっくりと回転している。
 そこに何かある。
 数字が出る。何の数字なのかわからない。
 いくつもの数字が浮かび上がり、すぐに消えていく。
 何故そんな数字がでてくるのか分からない。

 目の前の人物に覚えがある。
 誰かという答えは思い浮かばない。
 別の人物が見下ろしている。
 誰なのかわからない。
 数値が表示される。何の数字かわからない。
 その人物の体と思われる場所の一点に点滅する光がある。
 何の場所なのか分からない。何の光かわからない。
 目は開いている。
 なのにわからない事ばかり増えていく。
 瞼を開いていた力は無くなり自然に瞼はおりて、何も見えなくなる。
 数値も消える。
「ジョー」





 優しい声だった。




 なのに、神父のものとは違って優しさだけではなくどこか痛みを抱えたような、見覚えのないなにか熱を持ったような
深い部分から掬い汲み上げるような強い声。
 撫でられているようだった。
 どこか冷たく硬い。

 それが瞼に頬に唇に顎に

 まるで指のようだと009は思った。



 金縛りにあったように指一本すら動かない自分の体を009が腹立たしかった。
















 片目の調整を行うはずだった009がパニックを起こし過呼吸症候群のような反応を示し、処置を行えるような状況ではなくなった。
   右目を覆った包帯は無残にも引き千切れ、その隙間からは瞼が見えている。
 爪が入らなかったようで眼球は無事のようだ。

 だが爪を立てた顔の数か所は肉が抉れ血が滲み出していた。
 少しずつ雫を下に垂らし、頬を伝わって服を汚している。
 サイボーグなのだから、過呼吸なんてものは本来起きないはずだ。



 ましてや009はサイボーグとしての処置をしてすでに2年もの年月が経っている。
そのサイボーグ手術直後ですら不具合も拒絶反応も起こすことなくBGを抜け出すために交戦し日本までたどり着いた。
 せいぜい、目の小さな傷と脳波通信に少しばかりエラーが起きたくらいで大事には至らなかったとギルモアは記憶している。
 今になって拒絶反応のような症状は起きるはずがない。

「すまん・・・つい今の009と混同しておった」


 004は何も言わなかった。

 たとえ、今の009が記憶のある009であったとしても、ギルモアの行為はエチケットがあったとは思えない。
 ゆっくりと処置室の処置台に横たわった009を見下ろしていた004がギルモアを見る。
 これまでの009がどうだったか定かではないが、混乱状態になることは無かった。
 確かに眼球の処置を意識がある状態で行ったことは一度も無い。眼球自体ですら処置にはかなりの手間が掛る為、
加速装置同様慎重に行っていた。
 メンテナンスを行うことはあっても目玉そのものを交換するのは多分、今回が初めてだろう。
 精度を上げるため 照準眼を持つ004や超視力を持つ003はBGの実験施設にいた頃、目玉そのものを交換するということはあったが、
他のメンバーよりはずっと繊細かつ精密に処置を施された場所だった。
 だからそれも相当慎重に行われていた。

 もちろん、これまで009が目の処置を行われることは多少なりともあった。
 だが、今の009はその2年前まで記憶がさかのぼっている。
 体は調節されていても意識が伴っていない。
 00メンバーは模擬戦で自分の体や顔が破損したとき、その部分から出るコードや機械部を見て自分が人間とは違う存在という衝撃を受けた。
 誰もが通った道で、誰もが混乱した。全員がそうだろう。


 だが、009は違う。


 もちろん当時多少なりとも混乱していた。

 戦闘機と交戦し、マシンガンを撃たれ、加速装置を使った世界を体験したとはいえ、
それでもどこか、まだはっきりと、自分がサイボーグになったのだという自覚すらないままだった。
 あんなふうに試験管に入った自分の体の一部を目の当たりにするという行為は
何も009だけが体験した出来事ではなかったとしても、その一番最初の出来事が009の中から欠乏している。 
 それがはっきりと自覚したのはいつのことだったのか、誰も知らない。004もだ。
 ギルモアは部屋を暗くし、暗視ゴーグルを掛けると009の右目を覆った包帯を外す。そして閉じていた瞼を処置用の手袋をはめた手で開いた。
 確かにこの場所には004が言うようにちゃんと目玉が入っている。
 だが、その場所から出てきたのは左目と同じ赤い目ではなく、アイスグレーの瞳だ。
 入っているのは004のスペアの目だ。
 暗視スコープを備える004の照準眼は特殊なゴーグルを掛けなくても色彩まではっきりと分かる。
BGというのは戦争さえ起こさなければこんなに役に立つ技術を持っているのに。厄介なことだ。
 今、009の右側の眼球は009が最初見たとおり、試験管の中で調整中だ。
 先日の戦闘でつぶれてしまった眼球を処置するまでの間だ。
 つぶれてしまった右目を空洞のままにしておくのも選択にあったのだが
BGがまだ成りを潜め研究所に何の前触れもなく攻撃を仕掛けてきたとしたら・・・
場合によってはかなりの戦力低下の可能性もあった。
 故、構成上004を基に作られたを眼球を嵌めこむ結論に至った。

 それが正しい判断であったとしても、 本当に正しい選択なのか、









だれにもわからない。














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