009は004にしゃちほこになった体をベットまで引きずりあげてもらって
差し入れの006の料理を何とか動く左手で頬張っていた。
食事の途中で、体が固まったのだ。いい匂いのする食事を前にお預けを食らったのだ。
必死にもなる。
「…ハムスターか」

上品さはない。が
004は006が見れば喜ぶだろうな、苦笑しながら言った。
最初、あまりにも食べにくそうにしていたのを見かねて、004は

食べさせるか?

と009に提案したがすさまじい勢いで首を横に振り続けて断った。
相手の問題ではなく そもそも、人に向けて口を開ける
行為そのものが009は好きじゃない。

「戦いが終わったら何かしたいことはあるか」

食事終わりかけのころ、何を思ったのか、004はそんなことを口にした。
何の前触れもない質問だった。

「どうしたんだい、急に」
「…いや、なんとなく」  

 いろいろ思うことがあったのに、どれも言葉にすることができず、009がいえたのは

「考えてない」

そんな言葉だ。

「即答かよ」
「どうだろう…なんていうか…うううん」
「…俺に手伝えそうなことか?」
 004の言葉に、009は驚いて
「え、手伝ってくれるのかい?…そりゃ早く叶いそうだとは思うけど」
「何だ、ちゃんとあるんじゃないか。どう言った事だ?」
 しばらく、009は考えたが
「ないしょー」
結局、009は笑っただけで答えは言わないままだった。
「君は? 社交ダンスとか始めてもいいんだよ?」
「なんでだよ」
 君シュッとしてるか、似合うよ、きっと。と至極まじめに言った。
「なんだ、しゅっとって」
「シュッとはシュッとだよ」
 どこの関西人だよ。お前…と呟く004を無視して
「やーがーておとこはーわーかい娘にこ・い・を♪」
「コーヒールン〇を流すな。あとそれ、ルンバじゃないからな」と注意をされる。 
 そんな曖昧な言葉と他愛もない言い合いをして













「何にもないなら、 俺と旅でもするか」











 食後はコーヒーでいいか と言ったような空気で 彼は言った。


















 けれど、散々言葉に詰まって 結局、009は004の言葉に何もいえなかった。






 009の沈黙をどうとらえたのか、004は笑って
 冗談だ
 っとその場を流しただけだった。






























…………………





 そのことについて申し訳なかった、と009は思っている。
 確かに、言葉に詰まった。
 ただ、それは面倒とか、困るとかいやだとか そういったことではなく
 009からしてみれば004のような人は
 幅広い人ではあるけれど、規律正しい人で
 一人で、簡単にどこでも行けてしまえる上に必ずあるべき場所に帰っていく人だ
と思っていた。
 たった一人でも。
 だから、行きたいとか行きたくないとかの返事よりも、
 一体、どうしたんだろう、という思いの方が強かった。
 彼が抱えている問題が自分にどうにかできるだろうか、と。
 しかし、どうであったにせよ、009は自分が004を傷つけたから
 謝罪のタイミングが欲しかったが、どうしても言い訳のように聞こえてしまえる
ようなきがしてどうしていいかわからなかった。


そんな出来事を思い出している数秒の沈黙後、004はようやく 言葉を再開させた。


  「…俺たちが、お前を一人残して死んでも、戦えるか」











 脈絡はない、これまでの004の言葉に009はようやく彼が
何を言いたいのか分かった。




















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